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税制

利益超過分配は「元本の払戻し」へ——令和7年度改正の実務を読む

2026-07-10 / 読了 9分 / 編集部

2026年4月、受益証券発行信託型STの分配税制が変わった。減価償却の重いアセットほど恩恵が大きいこの改正は、商品設計と発行体の顔ぶれをどう変えるのか。実務の急所を整理する。

何が変わったのか

不動産STの主要スキームである特定受益証券発行信託には、従来「信託計算期間の途中で受益権の元本の一部を払い戻す」規定が存在しなかった。その結果、減価償却費に相当するキャッシュ——資金流出を伴わない費用の分——を投資家に分配しても、税務上は全額が利益処分(配当)として20.315%の課税対象になっていた。匿名組合スキームであれば元本の払戻しとして非課税処理できる部分が、受益証券発行信託型では課税される。J-REITの利益超過分配(出資等減少分配)と比べても不利な状態が続いていた。

令和7年度税制改正は、受益証券発行信託計算規則の改正とセットでこの構造を解消した。2026年4月1日以降に行われる元本の払戻しから、当期未処分利益を超える分配(利益超過分配)は「元本の払戻し」として扱われ、当期の配当課税の対象から外れる。

投資家側の取り扱い

改正後の分配は2階建てになる。当期利益の範囲内の分配は従来通り配当として20.315%(所得税15%・復興特別所得税・住民税5%)の源泉徴収。利益超過分配の部分は元本の払戻しとして扱われ、税務上は保有分の一部を譲渡したものとみなされる。譲渡収入は払戻額、譲渡原価は取得価額にアセットマネージャーが公表する「元本減少割合」を乗じた額で、差額が上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税の対象になる。取得価額はその分だけ減額され、次回以降に引き継がれる。

実務上の要点は口座区分だ。源泉徴収ありの特定口座では証券会社のシステムが取得価額を自動調整するが、源泉徴収なしの特定口座・一般口座の保有者は確定申告が必要になる。2026年3月には野村證券が対象銘柄の保有者向けに分配金取扱いの変更を通知しており、税制変更に合わせて信託計算期日や分配スケジュールを見直す銘柄も出ている。

商品設計への影響——償却系アセットの解放

この改正の恩恵はアセット一律ではない。減価償却が重い物流施設(特に冷凍冷蔵設備を持つもの)やホテル(建物・設備にFF&Eの短期償却が乗る)ほど、「非課税で受け取れるキャッシュ」の割合が大きい商品を設計できるようになる。J-REITで物流系リートが利益超過分配を定番としてきたのと同じ設計自由度が、STにも開放されたことになる。

逆に、土地比率の高い都心一等地オフィスでは償却が軽く、改正の効果は限定的だ。今後の新規組成では、税引後利回りの設計面で償却系アセットの相対的な魅力が増し、発行体の顔ぶれにも影響する可能性がある。

残る論点

一方で、匿名組合型ST(電子記録移転権利)の税制は据え置かれた。分配は原則として雑所得のままで、申告分離課税も申告不要制度も選択できない。受益証券発行信託型との税制上の非対称は残っており、公募案件が受益証券発行信託型に集中する構造はむしろ強まったと言える。

SOURCES / 出所

本記事は制度・実務の一般的な解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。

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